2011年06月01日

小説感想:ログ・ホライズン

Web小説から書籍化した、橙乃ままれが描く異世界冒険大河小説。
MMORPG<エルダー・テイル>をプレイしていたプレイヤー達を襲った<大災害>は、彼らを<エルダー・テイル>に酷似した異世界へと閉じ込めた。
逸早く事態への対処を始めた<付与術士>(エンチャンター)シロエ。「腹ぐろ眼鏡」の異名を持つシロエの冒険が、策謀が、そして決意が世界を動かす。
現在第2巻、以下続刊。
「小説家になろう」にてWeb版も公開中

以下、ネタバレを含む感想


 MMORPGの世界に取り込まれ、キャラクターに憑依するという<大災害>から物語は始まる。
異世界に閉じ込められたプレイヤーは日本サーバーだけで推定3万人、その中でも最高レベルにして古参の<付与術士>であるシロエを主人公に物語は描かれる。

 メインキャラクターは“腹ぐろ眼鏡”の異名を持つシロエを主人公に、前衛を務める<守護戦士>(ガーディアン)にして相棒・直継、ヒロインにシロエを“主君”と仰ぐ<暗殺者>(アサシン)の少女・アカツキ。
脇を固めるキャラクター達もはシロエ達が“班長”と頼りにする頼れる大人・にゃん太、ギルド<三日月同盟>を率いる世話好きの姉御・マリエールとそのお目付け役のヘンリエッタ、1巻のゲストヒロインと言える遠方に孤立してしまった少女・セララと層が厚い。
 また、2巻ではシロエが<大災害>直前に面倒を見ていた初心者の双子、ミノリとトウヤも登場。
シロエがアキバを揺るがす起爆剤になった姉弟であり、ただ助けられるだけでなく「シロエのようになりたい」「シロエに助けられただけの価値を示せる存在になりたい」と努力と向上心に溢れていて好感が持てる。
 どのキャラクターも個性的で魅力的だが、個人的にはにゃん太班長がお気に入り。
自分を“年寄り”などと評しつつ、シロエ達を見守って相談に乗り、セララの危機を紳士的に救う。年をとったらこんなジェントルマンに成りたいものである。
もっとも“年寄り”と自称していてもシロエの推測では30代〜40代、それまでにこんな紳士になれるかと問われると非常に厳しい。

 1巻から2巻のストーリーとしては、まだ“何も判らずゲームの世界に召喚され、なんとか拠点であるアキバの自治を成立させた”という序盤も序盤。
だが数万人規模のプレイヤーがいることで其処に辿り着くだけでも、見所と言えるイベントに事欠かない。
 1巻の中盤では襲いかかるPKに、戦闘指揮官としてのシロエがその手腕を発揮する。
冷静な分析から敵の伏兵を看破し、裏の意味を込めた言葉でその制圧を指示し、見た目だけが派手な呪文を目晦ましに補助呪文で回復役を無力化する。
この戦闘では瞬時に伏兵を見抜き戦場を支配したシロエも凄いが、シロエのメッセージを瞬時に理解し役割を完遂したアカツキも凄い。以心伝心、主が主なら忍も忍だ。
また、後半でのセララ救出遠征ではグリフォンという他のプレイヤーとは一線を隔する手札を示し、ギルド<ブリガンティア>との戦いではにゃん太との連携で<付与術士>としての絶技を見せる。
他人の高速連続技の隙間に魔法で支援など、確かに人間業ではない。
 2巻では戦闘指揮官や付与術士としてではなく、参謀もしくは策略家としてのシロエがその力を発揮する。
法も無ければ現実的な罰則も無い無法地帯に、自治と秩序を築き上げ、希望を示す。
ただし、その手段は実に黒い。ハッタリ・ミスリード・脅迫と「腹ぐろ眼鏡」の異名に相応しい。
古参プレイヤーの間で有名なのも納得の手腕である。

 設定のとしては“ゲームの世界に取り込まれる”というよくある作品だが、その世界のちぐはぐさが非常に独特。
ゲームだった頃の仕様に行動を縛られる事もあれば、逆にゲームだった頃とは全く異なり現実を感じさせる事もある。
最初に出てくる顕著なものが“食事”だ。
モニター越しに操作していたゲームの頃と違って、空腹も感じるし味も感じる。
しかしシステムメニューで作製した料理アイテムは全て同じ味(曰く:食用ダンボールの味)の“食料アイテム”になり、手作業で料理を行うと奇妙なゲル状物体などの謎アイテムとなる。
シロエの旧友・直継の「これって、俺たちにマズメシを食わせ続ける神様の拷問部屋なんじゃね?」との発想も納得できる。
“血を吐くような毒を無理やり喰わされる”のではなく、“我慢できる不味さだが毒ではなく、しかも他の料理が一切ないので空腹を凌ぐにはそれを食べ続けるしかない”というのは確かに拷問としてはハイエンドだ。ついでに言うと、死んだプレイヤーはデスペナルティを受けて復活するので死んで楽になることも無い。
ただ、天然の果物(素材アイテム)は味がするらしいのだが、何故シロエ達はそれを集めずに“食料アイテム”で我慢したのかが不思議だ。

 Web小説から書籍化したログ・ホライズンだが、「小説家になろう」で現在もWeb版を読む事が出来る。
細部の違いや追加シーンの存在を見比べるのも面白いし、Web版を読んでみて購入を考える事も出来る。3巻が待てないのでWeb版で先に読むというのもアリだろう。
書籍化発表前から読者だった身としては後のネタバレを恐れる必要は無いので、Web版を読み返しつつ8月の3巻を楽しみにしたい。
posted by 蒼炎刃風 at 01:46| Comment(0) | 小説感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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