2011年10月01日

小説感想:ログ・ホライズン4 ゲームの終わり【下】

Web小説から書籍化した、橙乃ままれが描く異世界冒険大河小説。
MMORPG<エルダー・テイル>の世界に取り込まれたプレイヤー達の、冒険と共に生き抜く日々を描く。
ベテランの指導で研修を受けるミノリたち新人プレイヤーと、大地人との交渉に臨むシロエ達<円卓会議>。
そんな二組の一行の前に、モンスターの群が姿を表す。
ザントリーフ地方を襲う20000のモンスターに対し、1200の冒険者が立ち上がる。
狂戦士クラスティの戦斧が唸りを上げ、シロエの切り札が世界を揺るがす。

現在第4巻、以下続刊。
「小説家になろう」にてWeb版も公開中
前巻までの感想はこちら
1〜2巻
3巻 ゲームの終わり【上】

以下、ネタバレを含む感想

 ザントリーフ地方に姿を現した15000の<緑小鬼>(ゴブリン)に対し、<自由都市同盟イースタル>は混乱に陥る。
大地人の守護者である<イズモ騎士団>の消失によって対応する手段の無い大地人たちは、アキバの冒険者を利用しようと苦心する。
対する冒険者の代表、<円卓会議>も大地人を上回る精度の情報から、会議を進める方針を定める。
その中でソウジロウが云った真理は、身も蓋も無くて、ある意味で笑えるモノだ。
「数はそこまで脅威じゃありませんよ」「こちらは1500もいれば殲滅は可能です」
確かに相手が<緑小鬼>と云う事もあり、個々の戦力で大きく勝っている以上、一人当りノルマ十匹と考えれば済む話。(ただし例外あり、<緑小鬼の将軍>(ゴブリン・ジェネラル)が62レベルという事実には驚愕した)
15000という数字を“現実”に当てはめ脅威を感じて居た者にとっては、肩透かしを食らって苦笑するしかない。
そして、大規模戦闘の前にシロエが<円卓会議>に明かした“死のリスク”に対して、クラスティによる驚愕の発言が齎される。
彼は既に二度の死によって、些細な内容とはいえ記憶の欠落を自覚していた。
だが真に驚くべきは、それが自身の身に降りかかっても動揺どころか分析し、大規模戦闘の最前線へ飛び込むクラスティの胆力ではないだろうか?
 一方でマリエール率いる新人研修の一団も、<水棲緑鬼>(サファギン)の強襲を受ける。
辛うじて第一陣を退けた新人達は背後にある大地人の町を守る為、<帰還呪文>による撤退ではなく、防衛戦を選択する。
新人プレイヤー達の行動は“死のリスクが無い(と思っている)事”と“冒険者としての人を超えた力”に支えられている面も在るだろう。
しかし圧倒的多数のモンスターに挑む彼らの決断は勇敢である事は、敬意に値するものだ。
<エターナルアイスの宮殿>が駆け引きによって終始したのに対し、こちらは完全に善意のみで状況が動いた為、非常に快いと感じた。
 戦力があっても情勢によって動けない<宮殿>サイドと、自由に動けるが戦力の足りない<新人>サイド。
状況を動かしたのは、大地人の“ぐうたら姫”レイネシアだった。
彼女の政治を無視した一個人としての請願によって、1200の冒険者が<緑小鬼>の討伐に立つ。
状況さえ動けば、あとは一方的な戦いだ。
先行したクラスティ揮下の96人が<緑小鬼>の群を磨り潰すようにして貫き、シロエの参謀本部指揮下にある本隊が包囲・殲滅を行う。
残党を散らす事無く処理した事はシロエの腕によるものだが、やはりインパクトとしてはクラスティの戦闘描写が勝る。
個々の戦力に圧倒的な差があるとは言え、数倍の敵を蹴散らす様は某・惑乱の淑女も顔負けの蹂躙戦と言える。……元ネタ、判る人いるかな?
 もう一つのクライマックスは<新人>サイドを引き金として描かれる。
ミノリ達新人パーティの奮闘によって大地人の街は守られるものの、想定外の被害が齎される。
前巻で一皮剥けた新人達、特にミノリは常識外といってもいい戦況管制能力を発揮し、十分に戦った。
しかし低レベル故の戦力不足、彼等の許容量を超えた敵との交戦で、妖術士ルンデルハウスが致命傷を受ける。
しかも、彼の正体は不死である冒険者ではなく、大地人だった事が文字通り致命的。
仲間達が泣き崩れる中、ミノリはシロエへの救援を求める。
どう考えても絶望しかない状況をも跳ね返す絶対的な信頼。
頼られた以上、助ける事は“意思”ではなく“前提”とする思考。
其処で描かれるミノリのシロエに対する信頼と、それに応えるシロエは、並外れた絆を感じさせる。
そして、シロエの引き起こす主人公の名に相応しい活躍が、ルンデルハウスの命を繋ぐ。
のちにシロエが“東の外記(げき)”の二つ名で呼ばれる原因、<エルダー・テイル>のゲームには搭載されていない魔法(、、、、、、、、、、)の開発。
クラスティの戦いを上回る、最大のインパクトを放つシロエの大活躍には脱帽するほか無い。
 そして無事駆逐されたモンスターの群。
冒険者(プレイヤー)の<円卓会議>と大地人(NPC)の<自由都市同盟イースタル>で無事条約が結ばれる。
条約締結の宴では、シロエに誘われて隠れて練習していたダンスに臨むアカツキが実に可愛らしい。
ドレスに着付けられ、シロエと共に拙いステップを踏む姿は、アサシンの少女では無く、一人の乙女と言える。

 3〜4巻ではシロエ、クラスティ、ミノリのトリプル主人公といっても良い展開で、群像劇としての特色が強くなっている。
更に云えばミノリはシロエサイドのヒロインとしての立ち位置もあり、メインヒロイン・アカツキの立場を脅かしても居る。
<ゲームの終わり>のメインテーマと思われる“ゲーム時代にはNPCであった大地人との交流”もクラスティのヒロイン・レイネシア姫によって魅力的に描かれていると感じた。
 そして、個人的に特に楽しめたのが以下の3点。
新人たちを使って緻密に描かれた3巻のパーティレベルの戦い。
4巻でサーバー最高峰のプレイヤー・クラスティとシロエによって展開された軍勢規模の大規模戦闘。
“東の外記”シロエによる反則的な“新たな魔法”の開発
3〜4巻は2ヵ月連続刊行と云うこともあり、間を空けずに存分に楽しむ事が出来た。
 次巻、5巻は11月発売予定。
乙女達の心が揺れる休日が描かれるのが非常に楽しみだ。

追伸:巻末付録のモンスターファイル、“七なる監獄のルセアート”って名前だけでも何処かに出ただろうか?
posted by 蒼炎刃風 at 23:00| Comment(2) | 小説感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
1巻の直継紹介のページに出てますね
Posted by at 2011年10月03日 07:12
完全に忘却の彼方でした。
さっそく探してみます。
Posted by 蒼炎刃風 at 2011年10月05日 14:11
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