2011年12月01日

小説感想:ログ・ホライズン5 アキバの街の日曜日

Web小説から書籍化した、橙乃ままれが描く異世界冒険大河小説。
MMORPG<エルダー・テイル>の世界に取り込まれたプレイヤー達の、冒険と共に生き抜く日々を描く。
ザントリーフのモンスター大量発生から2ヵ月、平穏を取り戻し異世界に適応しつつあるアキバの街で祭が開かれる。
シロエが彼に想いを寄せるアカツキとミノリの二人に誘われる一方で、剣を用いない攻撃によって静かなる戦いが人知れず幕を上げていた。

現在第5巻、以下続刊。
「小説家になろう」にてWeb版も公開中
前巻までの感想はこちら
1〜2巻
3巻 ゲームの終わり【上】
4巻 ゲームの終わり【下】

以下、ネタバレを含む感想

 アキバの街で開かれた<天秤祭>で描かれる少女達の恋模様と、その裏で戦端が開かれたアキバとミナミの前哨戦。
ある意味で温度差の激しい、二面性溢れるエピソードと言える。
 まず描写されたのはアキバの街におけるシロエのイメージアップを狙ったミノリの奮闘と、ミノリに対抗するアカツキの少女二人。
この時点ではまだ自覚の無いミノリと、自覚があるが故に苦悩するアカツキ。
その容姿から、“実妹に妹扱いを受ける”“同世代と思った中学生に告白される”といった中学生(こども)扱いを受け続けてきたアカツキ。
そして初めての想い人を巡るライバルが姿を現したと思ったら相手は本物の“中学生”、皮肉と言う他無いだろう。
そんな二人に手を引かれシロエが訪れたのはケーキバイキングの大会。
両手に花のシロエに対して行われたホールケーキ攻撃は、判審員が男性である限り無罪を勝ち取れるだろう。
余談だがシロエのソウジロウへの八つ当たりも無罪、こちらは失敗だった訳だが。
 そしてそんな微笑ましい表舞台の裏で進行していたのが、<円卓会議>に対する意図的なトラブルの飽和攻撃。
街中でトラブルを頻発させ、意図的な事務書類の重複や非効率化によって処理を遅らせ、祭を失敗させる。
それによってアキバを治める<円卓会議>の信用と支持にダメージを与える。
だがの計画も“腹ぐろ眼鏡”シロエに知られたのが運の尽き。
シロエ自身でさえ呆れ返るソウジロウのグループデートと云う巡回任務によってトラブルを根絶し、書類攻撃はシロエの弟子(ミノリ)によって最適化され、止めを刺す為に用意したレイネシア姫への一撃は<円卓会議>によってあっさりと受け流される。
最も哀れなのは巻き添えを食った――否、アキバの街の盾になろうと覚悟していたのに事態はシロエがあっさりと解決し、全く別方向で祭の見世物(イケニエ)となったレイネシア姫だろう。
騎士役のクラスティにも弄られ、そして見捨てられた辺り、そういう役回りと諦めたほうが彼女は幸せかもしれない。
特にシロエが、自身とクラスティの役割分担を変えようと思わない限り、言い方は悪いがレイネシアが彼の思惑から抜け出せる日は来ないだろう。
 そして情報戦を制し、無事に迎えた天秤祭の最後の夜。
祭を楽しむ人々の裏で、二人の策士が対峙する。
片や<円卓会議>の設立者・記録の地平線(ログ・ホライズン)のシロエ。
対峙するはミナミ全ての冒険者が属する単一ギルドの濡羽。
互いに新たな魔法の開発やタウンゲートの再起動といった偉業を人知れずなした切れ者。
“シロエが欲しい”“自分を言い訳にしてその力を存分に振るえ”と誘惑する濡羽にシロエは揺らぎつつも決別、敵としての絆を結ぶ。
その様子はある意味で濡羽がアカツキやミノリ以上にシロエを理解し、シロエにとってアカツキやミノリ以上に関心を引く存在となったようにも見えた。

 今巻は女性陣三人の存在感が主人公であるシロエを喰ってしまったとも言える。
初登場で、しかもエピローグにしか登場していないのに強大な色気――もとい、存在感でシロエを圧倒した濡羽。
アカツキへの嫉妬でシロエへの恋心を自覚し、シロエの孤独を理解し、そしてシロエの隣を目指すべく一歩を踏み出したミノリ。
シロエとの距離を縮めながらも、シロエへの理解でミノリに先んじられ、そして最も誇れる戦力としても“只の一流”に留まる事実に直面したアカツキ。
特に自身の道を定めたミノリとシロエとのスタンスが定まった濡羽に対し、アカツキは自らをどう定めどう立ち直るのか、次巻が必見と言える。

 次巻、アカツキが主役と思われる6巻は来春発売予定。
ここから先はWeb版もも存在しない完全新作なので、実に待ち遠しい限り。
期待して待ちたい。
posted by 蒼炎刃風 at 23:59| Comment(0) | 小説感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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