2013年12月22日

小説感想:ログ・ホライズン7 供贄の黄金

Web小説から書籍化した、橙乃ままれが描く異世界冒険大河小説。
MMORPG<エルダー・テイル>の世界に取り込まれたプレイヤー達の、冒険と共に生き抜く日々を描く。
アキバを遠く離れた北の地、シロエの姿は在った。
彼の目的はゲーム時代には様々なシステムを司っていた供贄一族との交渉。
だが、彼に突きつけられたのはかつて無い難易度の大規模戦闘(レイド)だった。
アキバの仲間を頼れない状況で、現実となったことで難易度を増した大規模戦闘に挑む為にシロエが選んだメンバーは……

現在第7巻、以下続刊。
「小説家になろう」にてWeb版も公開中
前巻までの感想はこちら
1〜2巻
3巻 ゲームの終わり【上】
4巻 ゲームの終わり【下】
5巻 アキバの街の日曜日
6巻 夜明けの迷い子

以下、ネタバレを含む感想

 殺人鬼がアキバの街を騒がせて居た頃、シロエは直継とリ=ガンを伴って北の地を訪れていた。
ゲーム時代には様々なシステムを司っていたNPCであり、現在は特殊な大地人である供贄一族との交渉を試みるシロエだが、結果は完全な拒絶。
当然と言えば当然。
融資を願い出ていながら目的さえも明かさず、結果的には武力をちらつかせる事になったのだから、上手く行く筈が無い。
失敗したシロエに課せられたのは大規模戦闘(レイド)、それもかつて無い高難度のフルレイドだ。
<円卓会議>の戦力を頼れず、時間も無いといった様々な制約――直継にドMと称されるほど――によって、シロエに残された手段は、あるギルドへの協力要請。
<円卓会議>参加を拒否し、ススキノの街へと移った<シルバーソード>だ。
何故か二つ返事で協力を受けたギルドマスター・ウィリアムと、更に二人の戦力――自称・アイドルのてとらとかつて敵対したデミクァス――を伴い、大規模戦闘(レイド)へとシロエは挑む。
 前巻でアキバを留守にしていたシロエが何をやっていたか明かされる導入部だが、まさか金策だったとは思わなかった。
とは言っても、何のために使うかはここでは明かさず、更に目標額は規格外。
やはりシロエに常識は通じない。
そして交渉の失敗から生じた大規模戦闘クエストでは、ウィリムとデミクァスが協力者。
ウィリアムに強制されたデミはともかく何故ウィリアムが二つ返事で協力してくれたのかは、後半で明かされるまでは気になって仕方が無かった。
なお、デミに関しては、てとらの御蔭で悪印象の大半が軽減されました。
嫁さんの尻に敷かれてるとか吹聴されてはねぇ?

 中盤では本格的に大規模戦闘(レイド)へと突入。
90Lvクラスの大規模戦闘、それも大災害で難易度が上昇している事もあってウィリアム達は苦戦を強いられる。
それでもボスを倒し攻略を進める彼等を、絶望が襲う。
ダンジョンに配置されたボスモンスター3体の連携。
圧倒的な戦力差が瞬く間に24人の冒険者を全滅させる。
シロエは初の“死”を経験し、テストサーバーと思われる場所でアカツキを再会する。
蘇生を果たしたシロエが聞いたのは、ウィリアムのレイダーとしての叫びだ。
大規模戦闘とそれを共に戦う仲間に対するウィリアムの想いは、この大規模戦闘に絶望しかけた仲間達に最後の気力を与える。
 前巻でも変則的な大規模戦闘が描かれたが、今巻では正攻法の大規模戦闘だ。
各パーティの基本的な役割と編制が説明され、非常に判りやすかった。
同時に大規模戦闘で得た装備は大規模戦闘を続けることで維持するというのも実に興味深い設定。
それだけにボス3体の連携の絶望感が圧倒的。
巻頭に記されたHP等のステータスはこの絶望感を高める為の伏線だったようだ。
大規模戦闘を続けられなくなる事がシルバーソードに与えた絶望感は、想像さえ出来ない。
そして、それでも彼等を立ち上がらせたウィリアムの叫びには胸を打つものが在った。

 そして終盤。
熟練のレイダーであるウィリアムをもってしても不可能と断じた大規模戦闘を“腹黒眼鏡”が攻略する。
エルダー・テイルが現実となった事で生じたボスの連携という悪夢に、シロエはダンジョンの部分破壊によるボスの隔離・分断による確固撃破で対応する。
ボス部屋の鉄格子を破壊して閉鎖されたボス部屋の隙間から脱出、逆にボスを隔離するなどという思考の柔軟さは流石“腹黒”と言うしかない。
七なるなる庭園のルセアートを隔離し、分断した四なる庭園のタルタウルガーと三なる庭園のイブラ・ハブラを並行して対処する。
フルレイド24人とレイドボスのあらゆる情報に対し、シロエの全力管制戦闘(フルオントロールエンカウント)が力を示す。
だが敵もさる者、ルセアート本体の隔離に成功したものの、人間サイズの眷属が乱入し、シロエ達を襲う。
レイドの危機を救ったのは、あのデミクァス。
シロエというオプションを装備(・・)し、自らを囮として30に届く数の眷属を主戦場から引き離す。
決死の引き回し(カイティングの最中、)シロエとデミクァスは初めて互いの胸中をぶつけ合う。
シロエはデミクァスが嫌いであり、デミクァスもシロエを嫌っている。
“折り合わない”という一点で、この二人は“折り合った”のだ。
激しい大規模戦闘(レイド)の果てに、シロエは供贄の総領・菫星と再会する。
大規模戦闘の攻略者への権利として、金貨を手に出来ると告げる菫星に対し、シロエは己の目的を明かす。
この資金を用いてサーバー中のゾーンを購入し、その権利をヤマトサーバーに譲渡する。
それによって起こるのは、全てのゾーン私有化の封印だ。
ゾーン購入という闘争手段を見つけ出したシロエ自身がつける“ケジメ”だ。
目的を遂げ、ウィリアムとの友誼を結び、てとらという仲間を得て、シロエはアキバへと帰還する。
住処へと帰還したシロエは出迎えたアカツキと、互いの変化を感じ取り、笑いあう。
 注目すべきはやはりシロエの全力管制戦闘(フルオントロールエンカウント)だろう。
かつてミノリが見せたモノの到達点。24人のフルレイドと敵の全てを管理・予測する神業。
いったいどういう頭の造りをしているのか?
そして敵の方も異常だ。人間とは違うといっても眷属を生み出すために自らを貫いたルセアート行動は狂気を感じる。
この大規模戦闘は敵味方ともに死力を尽くしたという他無い、読み応え十二分な戦いだった。
そして結末で明かされたシロエの目的。
責任感が強すぎるとも言えるが、大地人と冒険者の関係には必要な事。
これを遣り遂げたシロエはリ=ガンのいう大魔道士の名に相応しい。
アキバへと帰還したシロエの表情はさぞ晴れやかだっただろう。
仲間達との再会シーンは感動だが、てとらという(直継に対する)爆弾がいつ爆発するのか実に楽しみでもある。
対マリエ&直継用の精神攻撃要員(?)としてヘンリエッタ達に活用していただきたい。

 さて8巻では、年少組が西へ行く模様。
目的をは様子のおかしなモンスターから予測される陰謀の調査。
年少組に任せるにはいささか荷が重すぎると思うのだが……ちょっとそこの御者の人、こっち向いてくれません?
今巻でクラスティを襲った事態にも関わってくる可能性も高いだろうし、行くのが“西”というのも非常に気になる。
放映中のアニメ版を楽しみながら、次巻を待ちたいと思う。
追伸:外観再設定ポーションの時のアカツキのアイコン等、スタッフは実に御茶目だと思う。いいぞもっとやれ。
posted by 蒼炎刃風 at 23:59| Comment(0) | 小説感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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