2015年03月31日

小説感想:ログ・ホライズン9 カナミ、ゴー! イースト!

Web小説から書籍化した、橙乃ままれが描く異世界冒険大河小説。
MMORPG<エルダー・テイル>の世界に取り込まれたプレイヤー達の、冒険と共に生き抜く日々を描く。
今巻では今まで語られてきた日本(ヤマト)から中国サーバー・アオルソイに舞台を写し、ついにあの人物が登場する。
かつてシロエも所属したプレイ集団・<放蕩者の茶会>(デボーチェリ・ティーパーティー)のリーダー、カナミだ。
作中で最も危険(著作権的に)な男・レオナルドをはじめ、彼女に率いられた個性的過ぎる面々がアオルソイで大暴れする。

現在第9巻、以下続刊。
「小説家になろう」にてWeb版も公開中
前巻までの感想はこちら
1〜2巻
3巻 ゲームの終わり【上】
4巻 ゲームの終わり【下】
5巻 アキバの街の日曜日
6巻 夜明けの迷い子
7巻 供贄の黄金
8巻 雲雀たちの羽ばたき

以下、ネタバレを含むあらすじ及び感想


 今回の語り部となるのはKR。
かつて<放蕩者の茶会>(デボーチェリ・ティーパーティー)に所属し、現在は<Plant hwyaden>(プラント・フロウデン)を統べる<十席会議>第十位の召喚士(サモナー)だ。
相棒である少女と共に、彼はアオルソイでの冒険譚を思い返す。

 最初に語られるのはニューヨーカーの暗殺者(アサシン)・レオナルドの不運だ。
<大災害>によるニューヨークの惨状から<妖精の輪>(フェアリー・リング)のランダム転移で脱出したレオナルドは完全に孤立した状況下でレイドイベントによって廃墟に閉じ込められる。
そんな状況でレオナルドの前に出現したのがカナミだ。
何故かエルダー・テイルで最も有名な<古来種>(NPC)、エアリス=ハックブレードを引き連れたカナミは、場当たり的な対処でレイドイベントを突破し、一同は包囲を突破する。
その夜、辛うじて難を逃れたレオナルドはカナミが日本を目指す理由を聞くことになる。
<大災害>の原因を探るなら<ノウアスフィアの開墾>が怪しい、それなら時差の関係で唯一アップデートが適用されている日本サーバーに行く。
順に説明されれば納得の行く話ではある。
そしてその話を補強する存在がその場にはいた。
それまで只の馬のように振る舞っていた白馬――〈白澤〉(はくたく)が名乗りを上げる。
〈幻獣憑依〉(ソウル・ポゼッション)――呼び出した召喚獣と操作を交換する特技――で遥か日本から情報収集に訪れていたカナミの旧友でもある<召喚士>、KRだ。
KRから拡張パック適用済みの証言を得たカナミ達は、レオナルドとKRを加え再び日本を目指す。
<武闘家>(モンク)のカナミ、施療神官(クレリック)のコッペリア、<古来種>にして<刀剣術師>(ブレイドマンサー)のエアリス、<暗殺者>(アサシン)のレオナルド、〈白澤〉に憑依した<召喚士>のKR。
恐ろしく個性的なパーティは一路、日本を目指す。
 レオナルドの陥った状況は緊急性こそないが致命的だ。彼を閉じ込めた様々な不幸の積み重ねは同情に値するものではあるが、彼の姿が緊張感をぶち壊しにする。
目元を隠すマスクに緑のスーツ、そして二振りの刀を操るニンジャ・レオナルド。
ええ、あの作品は元々はアメリカ産ですね。
レオナルドの癖にマスクの色は青じゃなくて赤ですけど。
笑顔の侍ソウジロウ・セタも際どい奴だったが、こいつは完全にアウトだろう。
いや、作中でリスペクトと宣言しているから逆にセーフなのか?
海を越えて訴えられたら負けそうだなぁ……
あと余談になるが、この廃墟の包囲網って飛行型の騎乗生物持ってたら普通に抜けられたんじゃないだろうか?
グリフォンとはいかなくても、ワイヴァーン(確か漫画版に持ってる奴が居た)とかペガサスとか。
そして満を持して登場するカナミと、元茶会のKRの出現。
ある意味感動的な再会なのだが、この二人の場合はそうはいかない。
KR曰く「カナミはあるプレイグループを、リーダーとして混乱させていた」
しかも彼自身も「面白がって尻馬に乗りもっと騒がせていた」
シロエやカズ彦の心労が目に浮かぶようである。
日本サーバーでシロエ率いるギルド<記録の地平線>(ログ・ホライズン)も個性的なメンバーだが、中国サーバー側はそれ以上に濃い面子だ。
性格的に一番マトモなのはレオナルドだろうが外見が致命的。
見た目がマトモなカナミは中身が論外。
どっちも比較的マシなエアリスは設定が中二病。
KRは外見が馬で中身は愉快犯。
コッペリアは今回のヒロイン枠だけあって比較的マトモだが、鎧がメイド服モドキな上に、終盤で明かされる秘密が結構致命的だからなぁ……
結論、人生は諦めが肝心である。

 次に描かれるのは補給の為に立ち寄ったセケックの村で起こったトラブル、加えてレオナルドと村人達、そしてコッペリアの交流だ。
<大地人>の少年のステータスに異常が発生し、半ばモンスターと化す現象。
<大地人>が疫鬼(イイグイ)と呼ぶ現象はレオナルド達の心に僅かな影を落とす。
今回は殺さずに助けられたが、自分たちが同じ目に合わない保証は無いのだから当然だ。
その後、村で過ごした数日間でレオナルドは子供たちに懐かれ、カナミの戦いからヒントを得た新たな技を研き、コッペリアとささやかな交流の時間を得る。
そのころ、中国サーバーで活動するギルド<楽浪狼騎兵>に対して異変が襲い掛かる。
異常な数が集まった灰斑犬鬼(ノール)の群れと謎の黒竜(ブラックドラゴン)だ。
その被害を被った<楽浪狼騎兵>はレイド規模の討伐部隊を差し向ける。
一方、村を訪れた商隊の生き残りからその情報を得たカナミ達は彼等の帰還を護衛しつつ東へと旅立つ。
商人ジュウハの旅の経験に助けられ順調に進む一行だが、<楽浪狼騎兵>春翠のもたらした討伐隊壊滅の報告が事態を一変させる。
コッペリアが<二重なる者>(パラレル・ワン)と名付けたステータスの二重表記現象とそれによって擬似的な不死性を得た黒竜がその原因だ。
ケセックの村に迫る灰斑犬鬼の脅威に対し、カナミとエアリスは戦いを挑む。
何を考えているかわからないカナミに、NPCであるエアリス、<大地人>(NPC)を守る為に死地に赴こうとする二人はレオナルドからすれば正気では無い。
だが、マトモである筈のコッペリアでさえ参戦を告げ、自身の正体を告げる。
<大災害>以前に彼女を動かしていたのはプレイヤーでは無く、MMO内資金回収botであると。
 冒険の合い間に訪れる日常シーン、そこで描かれる主人公(レオナルド)ヒロイン(コッペリア)の触れ合い。
正に王道だ。
私の場合はWEB版で事前知識があったのだが、初見の読者も大半はこの辺でコッペリアが普通ではない(・・・・・・)事に気付いたのではないだろうか?
ところでこのシーン、隠れて自主トレしてたらヒロインがマネージャーをしてくれるって、むしろスポーツ漫画みたいだと思ったのは私だけだろうか?
そして灰斑犬鬼との戦いに挑むカナミ達に対し決断出来なかったレオナルド。
<大地人>を人間と認められないなら、その為に死地に挑むのは馬鹿げているかも知れない。
生き返ると言っても死ぬのが怖いのは普通だ。

 終盤はレオナルドの決断と、村を守る為の決戦。
カナミ達を見送ったレオナルドと彼に語りかけるKR。
一度は戦いを拒んだレオナルドだが、記憶にあるヒーローに従い、それ(・・)に価値があると自分で決める。
この“価値を自分で決める”という部分は7巻のウィリアムと重なるものが在り、やはりこちらも胸に響くモノが在った。
そして彼の決断に合わせてKRも動く。
さも何でも無い事のように従者と本体を入れ替え、とっておきの真紅の竜を召喚しレオナルドと共に戦場に赴く。
先行したカナミ達が奮闘する遥か頭上を通り越し、紅竜は黒幕を乗せた黒竜と邂逅する。
レイドランクの黒竜とミニオンランクの紅竜、絶望的な戦力差の中でレオナルドは起死回生の一手に出る。
黒竜の後始末をKRに任せ、二人の黒幕を道ずれに地上へとダイブを決行。
そしてKRもレオナルドの信頼に応えた。
紅竜、ガーネット・ドラゴンを従者としての楔から解き放ち、レイドボスとして黒竜にぶつける。
と、こう書くとカッコイイのだが、その後に痛みで失神してヤマトに死に戻りというのだから締まらない。
また、ここで疑問点が一つ。
ガーたん、君はどうやってヤマトに帰ったの?
<冒険者>では無いので死に戻りや<帰還呪文>は使えない。
契約は解除されたのでKRが召喚で呼ぶ事も出来ないだろう。
自力で飛んで帰ったのだろうか……?
一方、黒竜から落とされた黒幕――<典災>(ジーニアス)の二人はカナミ&エリアス&コッペリア、そしてレオナルドによって討ち取られる。
エリアスの心を蝕むパプスの言葉もカナミのシンプル極まりない言葉で撥ね退け、両手剣の一撃がパプスを両断する。
ラスフィアVSレオナルドは壮絶な消耗戦だ。
膨大な数の灰斑犬鬼のステータスを使い捨ての身代わりにするラスフィアと<パラレル・プロット>と名付けた巨人の技――あるいは<オーバー・スキル>や<口伝>と呼ばれる新たな力でそれに対抗するレオナルド。
<デッドリー・ダンス>を核とした連続攻撃は刃の嵐となり、名前の切り替えに要する時間を超え最速最高の一撃、<絶命の一閃>(アサシネイト)を捻じ込む。
その一撃は、その名の通りにラスフィア本体を両断し、命を奪った。
戦いを終えたヒーローの元に仲間たちは集う。
 決戦に赴く前に迷うのは主役の特権と考えるなら、レオナルドはそれを行使したと言える。
というか今回のメンバーでは“迷う”という行為をしそうなのがレオナルドしかいない。
エリアスは古来種としての使命に燃えているし、コッペリアは元がBotだから“迷う”という行為に達するにはまだ時間が掛かるだろう。
カナミ? 論外じゃないでしょうか
そしてレオナルドとKRの出陣シーン。
感動的シーンなのだが冷静に考えると日米のオタク二人が某ヒーローで友情を結ばれたと考えると微妙である。オタク文化万歳。
戦闘後の会話でもレオナルドのコッペリアへの言葉はヒーローに憧れるものとして十分に及第点。
コッペリアの魂を認め、治癒の桜色と評する。
少々キザ過ぎるのもギーグなら御愛嬌だろう。

 “あの”カナミが満を持しての登場となった訳だが、実にヒドイキャラ(褒め言葉)である。
人を引き付けるカリスマ(?)はあるのだろうがシロエやカズ彦。レオナルドといった真面目な人間の胃が心配で仕方ない。
そして巻末には予想外に嬉しいオマケが。
<放蕩者の茶会>メンバーリストと相関図。
直継でさえ「比較的」良識派という事実を認めざるを得ない変人集団、
カズ彦の眉間の皴が涙を誘う。
そしてソウジロウの周囲はある意味予想通りだが、西風行きは確かナズナと沙姫の二人の筈。
更に三人追加とか話が違うっ……!!
そして何より意外なカズ彦とインティクスの相関図。
“おせっかい”と“心配”ってどう見てもフラグ。
カズ彦さん、あんたって人は……
閑話休題
今回は発売とほぼ同時にアニメ第二期が放映を終えた訳だが、今回も第一期に続いて良い出来だった。
基本は原作に忠実ながら、6&7巻の前半は上手く組み合わせて一つになっていた。
また所々でTRPGリプレイのキャラが出ていたり、漫画版のエピソードが入っていたりして原作既読でも十分に楽しめるものだった。
第二期の結末は原作よりも先行したが同じ結末となるのかWEB連載中のノウアスフィアの開墾からも目が離せない。
最終話のカナミの爆弾発言とか原作側では如何なのか気になって仕方が無い。
<典災>や<航界種>についても徐々に明らかになっていくようなので、WEB連載も、書籍版の次巻も続きが待ち遠しい限りである。
posted by 蒼炎刃風 at 00:00| Comment(0) | 小説感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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